🌿「絵を言葉にする」力と、私の議事録──他者理解から育つ“思考の技術”

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🌱シリーズ導入(第3回)

※この記事は、シリーズ『教育と他者理解』の第3回にあたります。


はじめに

最近、北鎌倉女子学園で行われた授業についてのニュースを目にしました。
東大名誉教授・柳沢幸雄先生が、「絵を言葉で説明する」授業を通して思考力を育てる実践をされていたという内容です。
Yahoo!ニュース(産経新聞)|得意分野を1つだけ尖らせる

この記事を読んだとき、私は深く共感すると同時に、自身の仕事の中で感じてきたある体験を思い出しました。
それは、「会議の記録を作る」という、日々のごく普通の業務です。


絵を言葉にするという思考訓練

「絵を説明する」とは、一見すると簡単そうに思えるかもしれません。
しかし、実際には以下のような多層的な思考が求められます。

  • 絵を観察する
  • 自分なりに解釈する
  • 他者に伝わるように構成する
  • 適切な言葉で表現する

さらに、他の人がどう説明するのかを聞くことで、自分の見方との違いに気づきます。
それによって「なるほど、そういう視点もあるのか」と新たな視点が加わり、思考が整理されていく。

これは単なる説明ではなく、思考の筋力を鍛えるトレーニングでもあるのです。


私の現場:「議事録」というもうひとつの“絵”

私の仕事では、会議の記録を担当することがよくあります。
その際、私は会議の内容を一度自分の頭の中で“映像のように再生”します。

誰が何を言ったか。
どんな順番で議論が進んだか。
どこで意見がぶつかり、どんな結論が出たか。

このプロセスはまさに、「絵を説明する」作業にとても似ています。

会議記録とは、会議という“言葉の絵”を、他者に分かりやすく説明するための再構成です。
この過程を通して私は、発言の背景にある意図を読み取り、対話の文脈を掘り下げ、他者の考えに触れています。


他者理解のなかで育つ力

会議中には、さまざまな価値観や思考スタイルがぶつかります。
それらと向き合う中で、私はたびたび迷い、葛藤しながらも、少しずつ視野が広がっていくのを感じてきました。

  • どうすれば誰もが納得できる形にまとめられるか
  • 自分の偏りに気づいたとき、どう修正すべきか
  • 「伝える」という行為がいかに奥深いか

記録作成を通して培われたのは、単なる作業スキルではなく、
他者と関わり、理解しようとする姿勢と、それを言語化する力だったのかもしれません。


教育は、今この瞬間も続いている

柳沢先生の教育実践は、中高生に向けたものでした。
しかし、私は思います。教育は、人生のどの段階でも続いていると。

社会人であっても、日々の業務や人との関わりの中で、私たちは「学び」や「育ち」の機会に満ちています。

  • 思考する力
  • 表現する力
  • 違いを受け入れる力

これらは、年齢に関係なく、他者との対話を通して育まれていくのです。


おわりに

「絵を言葉にする」力。
それは、単に説明する技術ではなく、**他者と向き合うための“心の技術”**なのだと思います。

私の記録作成もまた、思考を整理し、他者を理解しようとする営みのひとつ。
仕事の中にこそ、教育と同じくらい豊かな学びがある——
そう実感できたのは、あの記事に出会えたからこそでした。


🔗 参考リンク


🔗 シリーズリンクまとめ